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迷い道

結婚相手から罠をかけられた。奈落に落ちてヒロにあった。ヒロは見違えるようないい女になっていた。再び舞台に戻り捨てられた謎に迫る。


地崩れ6

「専務あのパソコン開かないのですが?」
「もう作業は終わった。開く必要もない」
 専務室から不機嫌そうに専務が役員会議に出ていく。私はパソコンを再度調べてみたが、今までの記録はすべて消されたように思った。上場はもう明日に来ている。ここまで来てもう引き延ばすことはできない。
 役員会を終えてもう一度専務室を覗くと、鍵が掛かっていて秘書のエリもいない。調査部を覗いて同僚の顔を見つけようとしているが、
「畠山係長は専務と出ているぞ」
 調査部の課長が笑いながら廊下に誘う。
「役員会では専務と社長にライブの上場については押し切られたようだ」
「畠山は?」
「専務の了解をとって個別の上場後の上場チームの検査をすることになった」
「よく専務が認めたな?」
「会長が押し切ったのだ」
 それを予想してパソコンの情報を消したのだ。だが気になるのは専務が今度に限って課長の私に何も相談をしていないことだ。エリも毎週泊まりに来ていたのが全くない。
「畠山は前々から部長の内々の指示で3か月前から上場チームを調べていた。それで彼に任されたのだろう」
「一人で?」
「何も知らされていない」
「部長が指揮を?」
「らしいな」
 不満なようだ。















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テーマ : ミステリ    ジャンル : 小説・文学
  1. 2019/09/19(木) 07:18:03|
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地崩れ5

 今日もエリは専務の接待に付き添っている。仕方なくいつもの屋台に寄ろうと階段を下りていく。課長になる前まではよくこの屋台に同期と飲んだ。
「儂も誘えよ」
 会長が肩をポンと叩いて屋台の長椅子に座る。親父が熱燗をコップに入れる。
「昔はよくここで役員とも飲んだよ」
 会長は3年前に代表取締役社長を下りて無役の会長職に就いた。会長は40歳になって社長を継いだ。元々銀行に入っていて支店長を勤めていたようだ。長男が証券会社の常務だったのが自己売買で大穴を空けたので次男の彼が急きょ引き継ぐことになったのだ。これは上場の歴史で何度も見ているが、こうして酒を飲むのは初めてだ。
「どうだ面白いか?」
「はい」
「私の撒いた種だが、息子ではあの男は使い切れないのだな」
「専務のことですね?問題でも?」
「あまりにもライブに足を入れすぎだな。渡辺会長はまだ42歳だが、無謀にも株をマネーゲームだと思っている。これは求められるITじゃないな」
「だがITバブルは起こっています」
「そうだ。どこまで進んでいる」
「月末には上場をします」
「2月も早いな。どうしてだ?」
「渡辺会長が急いでいるようです」
「テレビ局の株の買収だ。さすがにライブグループの資金が不足してきた。これは対テレビ局ではなく既存企業との対決だ。ネット証券はこの争いに巻き込まれてはいかん。よく考えるのだ」










テーマ : ミステリ    ジャンル : 小説・文学
  1. 2019/09/18(水) 06:51:43|
  2. ミステリー
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地崩れ4

 会長が動き出したのは現場にいる私にはわかる。調査部だけではなく総務部なども部内の書類を持ち出していく。専務からの言いつけで初めから上場の重要書類は鞄で持ち歩いている。だがライブの上場準備は着実に進む。
 エリからいつものように専務からの呼び出しがある。昨夜は珍しくエリが私のマンションに現れて泊まっていった。飲みさしのワインを持ってきていて美味しかったと勧められた。 
「今日から手持ちのファイルはここの共有のパソコンのみに入れるのだ」
 専務が指をさしたパソコンはネットに繋がっていない金庫のようなものだ。
「調査部が煩くなった」
「ライブはどうするのですか?」
「もうすぐだ。何としても上場させる。今から作業してくれ」
 嫌に焦ってるな。さっそく作業を始めると専務は社長に呼ばれて部屋を出ていく。私はまず同様の情報がないか確かめる。作業中なら記録を上書きしてしまうからだ。慎重を期して専務のパソコンの情報を一度コピーする。
「今から出かける。ついてこい」
 慌てて作業を済ませると専務専用車に乗る。
 ライブの会長室だ。ここは重要な会議があるとここに必ず集められる。専務は詳細なことはタッチしない。いや証券自身が苦手なのだ。
「期間を縮めるのは得策ではないと思いますが?」
 馴染みなった公認会計士が繰り返すが渡辺会長は首を横に振る。専務は会長に賛成している。どうも週刊誌がライブの今迄の上場や株の売買に疑問を投げかけているのだ。テレビ局の買収の資金が底ついてきたのだ。私も心配になってライブグループの売り上げを分析し始めている。渡辺会長と専務はマネーゲームをしているのだ。










テーマ : ミステリ    ジャンル : 小説・文学
  1. 2019/09/17(火) 07:52:35|
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地崩れ3

「兵頭君」
 唐沢調査部長だ。日頃から上場チームと仲が悪い。唐沢部長としては専務になれなかった恨みが今でもあるようだ。
「たまにはコーヒーでもどうだ?」
 半ば強引に応接室に引き込む。
「心配するな。贔屓の専務は秘書を連れてゴルフに行っている」
 エリは今朝は携帯に出なかった。部長は自分でコーヒーを入れて私の前に置く。
「ライブの件ですね?」
「そうだ。証券業界でもライブは話題だ」
と丸めていた週刊誌をテーブルに置く。最近のライブはIT事業より株の売買で社会を賑わせている。大手のテレビ会社の株を買い占めている。これは専務の話でも出ている。
「昨日会長が来てな、私が呼ばれてたよ」
「社長は大賛成と聞いていますが?」
 社長は5代目になるが父親の会長が中興の祖として今の証券会社がある。実はネットの導入は会長の仕事だった。今の専務を引いたのも会長だが専務は煙たいのか社長にくっ付いている。
「彼は分かってないのだ」
「その話なら私じゃなくうちの部長にしてくださいよ」
「あんな腰ぎんちゃくは相手にならん。実際に上場を現場で手掛けているのは君だ」
 確かに部長にはマル秘の情報は上がっていない。
「専務と手を切るのは今だ」
「私は単なる部下ですよ」
 立ち上がると頭を下げて出ていく。確かに社内では専務の下は花形で執権は課長が握っている。だが肝心の部分は専務が握っている。ライブの会長は重要な打ち合わせには専務しか呼ばない。








テーマ : ミステリ    ジャンル : 小説・文学
  1. 2019/09/16(月) 07:04:58|
  2. ミステリー
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地崩れ2

 エリとは来春に結婚の予定だ。いい女だが好きなタイプではない。派手好みで私には合わない。だが専務の付き合いで何次会も付き合っている間にそういう仲になってしまった。子供ができた。26歳の彼女もいい頃合いと思っているようだ。
「ライブの会長が来てるのでもう行くわ」
 まだ1時間もたたない間にエリが立ち上がる。
「専務は僕が一緒だと知っているはずだが?」
「ライブの会長が優先よ」
 もう席を立っている。私は支払いを済ませると赤坂の屋台に掛けてコップ酒を頼む。
「なんだデートじゃなかったのか?」
 先ほどの調査部の係長だ。彼とは時々ここで飲んでいる。もうコップが空になっている。
「ライブの話の続きだがな。調査部はライブの上場には反対だよ。グループ間の売買が多すぎる。粉飾の疑いがある。儲けは実質グループの上場益だ。まるでゲームのようだよ」
 ITバブルの始まり時期だった。ライブの会長らが火付け役だった。今日エリカの行ったクラブもそうしたバブル社長の集まりの場だ。お互いに2杯目を頼む。
「いやな話だがな。エリちゃんは元専務の彼女だと噂だぜ」
「そういうことは言わせていればいい」
 彼が立ち上がって3杯目を飲む。確かにエリを抱いた。それが唯一自分を縛っている現実だ。それ以上でも以下でもない。ポケットから千円札を2枚出して立ち上がる。ここから路地に入ると赤坂の繁華街に出る。この近くに専務がよく行くクラブがある。10時を回っている。
 目の前をゆっくりとタクシーが動き出す。後部席に専務にもたれて眠っているエリがいる。














テーマ : ミステリ    ジャンル : 小説・文学
  1. 2019/09/15(日) 06:54:29|
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プロフィール

yumebito86866

Author:yumebito86866
夢人です。これは『空白』に繋がる作品ですが、これは段ボール箱の住人ではありません。今回書下ろしで書き始めました。ここに登場する人物はみなどこかで触れあった人物ばかりです。そして知った事実がこの小説を書かせました。

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