迷い道

結婚相手から罠をかけられた。奈落に落ちてヒロにあった。ヒロは見違えるようないい女になっていた。再び舞台に戻り捨てられた謎に迫る。


振出11

 ふと夢の中で蘇ってきた記憶がある。並んで敷いている隣の蒲団を見る。こいつはますますいい女になってくる。そっと体を起こして押入れの中に顔を突っ込む。確かに専務の部屋のネットに繋がっていないパソコンに重要物を入れ替える時に、無意識にUSBに!
 押し込んだ背広とズボンを調べてみる。やはりズボンにあった!そのUSBに絡むようにメモ用紙が巻き付いている。携帯番号だ。これは会長から渡されたものだ。急いでUSBを差し込む。
 過去の3社のライブグループの上場資料と、ライブの仕掛け中の資料だ。私のパソコンになかったのは未公開株のリストだ。これはライブの方で手配していたリストだ。
「これだ!」
「これ何?」
 ヒロが起きていて背中にもたれて覗き込んでいる。
「専務の機密書類だ。なぜあの時に思い出さなかったのか」
 それほど動転していたのだろう。もっと時間をかけて調べる必要がある。
「未公開株のリストは100名ほどあるが、半分が個人だ。これを調べることができるか?」
「ええ、やってみるよ」
「おそらく名義借りで未公開株を仕込んで儲けるという手口だ。ライブの会長や専務の関係者だろうと思う。でも本名には間違いない」
「フェイスブックで絞り込むよ。最近は結構登録しているのよ」
「まだ寝ないと?」
 昨夜は午前さんで戻ってきた。
「今日は抱いてもらえる日よね」
 もうズボンを下げて口にくわえている。
「凄く大きくなっている。嬉しい!」





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テーマ : ミステリ    ジャンル : 小説・文学
  1. 2017/03/31(金) 06:07:51|
  2. ミステリー
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振出10

『アゲと言います。正一社長からそちらの仕事を振られましたよろしく!女です。腕はいいですよ。まずは挨拶代わりに』
と畠山のアドレス帳を送ってきた。そこには専務のアドレスもある。これは会社用のものだ。
『頼もしいな。このアドレスの中にも入ってくれ』
とアゲに返信すると時計を見る。
 夜の8時に北浜で前の証券会社の上場チームの一人に会う。前回の移動で大阪支店の営業に配置されている。彼は新人でよく飲みに行った仲だった。
 支店の玄関で顔を合わせて彼の行きつけの居酒屋に行く。
「行方不明と聞いてましたが?」
「いや巻き込まれたくなかったからな」
「就職は?」
「ぶらぶらしている」
「畠山課長がライブの株で何億かを手にしたと噂していますよ」
「勝手に振り込まれた5000万は調査部にとられた」
「そうなんですか」
「会社はどう?」
「ライブの会長が作ったクラブの会員を上場させていくようです。それで積極的に出資をしていますよ。ネット証券は伸びていて従来の顧客はグーンと減って。専務は現場では社長のようにふるまってますよ。ほとんどライブにばかり行ってますね」
と営業マンの推奨株のリストを見せる。
「まるで未公開株の詐欺師のような営業です。今他の証券会社の面接を受けています。営業は大半同じ状態です」
「専務が乗っ取ったんだな。社長は?」
「カジノに通いづめという噂です」
「会長は?」
「ほとんど会社には出て来られていません」








テーマ : ミステリ    ジャンル : 小説・文学
  1. 2017/03/30(木) 06:51:32|
  2. ミステリー
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振出9

「こいつはかなり助平や」
 暗黙の了解で二人のセックスは週に1回している。それは私が泥沼に入るのを恐れているからだ。完全にチェリーに取り込まれている。オーナニーに取り込まれた若いころに似ている。とくにあの頃はネットカフェの仲間は千円をを渡してヒロにフェラをさせていた。
 ヒロのメールを覗き込む。10日目にアクセスに成功している。ヒロが写真を送ってアプローチした。すぐに畠山が自分の写真を送っている。毎日のようにメールを送ってきて裸の写真を要求している。
「そのアドレスをこちらに送ってくれ」
「どうするの?」
「正一のところに送ってパソコンの中に侵入させる」
「畠山は独身なの?」
「バツイチだ。3年前に高校生売春で警察沙汰になりかけた。100万で和解した。これが原因で課長の昇進が遅れたのだ」
「とんでもないやつね。裸の写真送るけどその条件は何がいい?」
「オッパイまでにしとけよ」
 ヒロはピクチャーから5点ほど送ってくる。二人は炬燵に向かい合って座っている。これも炬燵で妙な行為に入るのを遮っている。
「乳首を隠しているのにしろよ。畠山には全裸でちんちんが写っているのをもらえ」
 彼は露出狂だから問題ない。
「これを脅しに材料にするのね?」
 彼らの一番崩れやすいのは畠山だ。
「メールを送った。ラーメン食べに行かない?」
 どうもこのマンションでは私は兄ということで説明しているようだ。
「わ!もう来たよ!」
とそのまま私のパソコンに送ってくる。畠山のメールだ。ちんちんをぶら下げて顔も鮮明だ。
「異常だな」










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  1. 2017/03/29(水) 06:54:59|
  2. ミステリー
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振出8

「機嫌が悪いな」
 朝から背中を向けてパソコンをやっている。
「昨日は女と寝たよね?」
「正一に会った。そしたら昔の彼女がいた」
「知っている。子供がいる」
「抱いてない。3人で昔話をしていたんだ」
「そう」
 男に嫉妬を焼かれるのも奇妙な気持ちだ。
 パソコンに神部からメールが入ってきている。神部は思ったより丁寧な調査をする。それで前金を30万送金しておいた。
『送ってもらった記事のクラブを調べました。クラブの契約は証券会社の上辻専務の名義です。不動産会社では内装も入れて2億は下らないとのことでした。マンションは青山にあってこれは家賃が80万です。上辻が時々通っているそうです。これはお願いなのですが、クラブにラインを入れたいので経費を…』
 これは後50万送ろう。
「神戸ちゃんね?私にも手伝わせてね!」
「ああ、まだ切り口が見えないのだがな」
「兄貴を騙した女がママになってるなんて許さない!」
「ならフェイスブックでこの男を捕まえてくれ」
 畠山のアドレスを教える。畠山はネットで若い女を探しては付き合う悪い癖がある。
「例の裏切った同僚ね。メロメロにしてあげるわね」
「それじゃ今夜は店を覗くよ」
「10時来て一緒に帰ろう?」






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  1. 2017/03/28(火) 07:06:07|
  2. ミステリー
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振出7

 ミナミの東心斎橋の雑居ビルに正一の会社があった。1階から6階までピンサロやマッサージ店が入っていて7階に事務所がある。ノックをすると思いがけぬ豪華な造りの部屋に若い5人の社員がパソコンに向かっている。中の一人の女性が奥の社長室に案内する。
「来たな」
「10年ぶりかな」
「ヒロのマンションに転がり込んでいるらしいな?あいつに何度も来いと言ってたがなあ」
「ネット販売の会社だな?」
「そんなまともな仕事やない。企業秘密を盗み出すハッカーだよ。ここには出勤しない社員が20人ほどいる。依頼が企業から来たら得意な奴に任せる。雄介もやるか?」
「いやその気はないよ。もう株だけで生きているさ。ただやり残した仕事を手伝ってもらえるかと。まず手始めにこの証券会社の上場チームのパソコンに入ってほしい」
「これは難問だな」
 もしパソコンが入れ替えになっていないなら記憶しているアドレスで開くはずだ。
「報酬は?」
「楽しみにしてくれたらいい」
「よし乗った!お前は嘘はついたことがなかったからな」
 その夜正一は自分がオーナーのスナックに案内する。どうも抱かれる女ばかりを集めているようだった。
「雄介やね?」
 隣に座ったママが唇を耳元に寄せてくる。昔の彼女だ。
「あなたが捨てたから正一の女になったのよ」











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  1. 2017/03/27(月) 06:57:42|
  2. ミステリー
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振出6

「ヒロの部屋に転がり込んだようやな?」
 朝の5時に寝て昼過ぎに起きて3時に新聞を手に三郎のすし屋に座る。
「日払いを追い出されたのだよ」
「最近チェリーは客を取らないと噂だ。とはいってもそれほど抱かれていたわけではないがな。5度ほど抱いたが今回は拒絶されたよ。それより仕事はどうするのだ?」
「ネットで飯が食えるからな」
「まさか昔のような侵入詐欺をしていないだろうな?」
 確かに大学時代の半ばまで彼らとそうしたことをしてアルバイトをしていた。だが株を始めてからは手を切っている。
「正一覚えているか?」
「ああ、あいつか」
「時々若いのを連れてここに来るが、ネット詐欺を続けている。ミナミに立派な事務所を構えている。雄介の話をしたら会いたがっていたぜ」
 彼とはその頃グループにいた女を取り合いしていたのだ。だが東京に行ってからは会ったこともない。東京に行く日に朝まで彼女とホテルにいた。三郎が名刺をカウンターに置いた。
 ふと手を止めた。週刊誌の写真にエリが写っている。十歳も貫禄が付いたような笑顔だ。彼女の横にライブの渡辺会長らが座っている。ITバブルの社長のクラブを銀座にオープンと見出しにある。私を嵌めた恩賞だろうか。だが私の子供をどうするのだろうか。だがこのけじめはつけないと次には進められない。
「チェリーの店に行くのか?」
「ああ、約束している」
 正一の名刺と週刊誌の記事を切り取ってポケットに入れる。










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  1. 2017/03/26(日) 07:12:55|
  2. ミステリー
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振出5

 私とチェリーは奇妙な間になった。ヒロの顔を思い出すと抱く気になれないが、それでも1週間に1度はカラオケバーに通うようになった。この街に戻ってきてすでに3か月がたっていた。私は働きもせず部屋の中にこもってネット売買に熱中していた。とくにライブグループ4社をマークして手持ちの300万を1000万に乗せていた。買収を進めていたテレビ局の株も買い進んだ。
 今日はチェリーが並んでパソコンを開いている。チェリーも200万を500万にしている。昨夜はまた彼女を抱いてしまった。だんだん彼女が女にしか見えなくなっている。
「ね、私のマンションに越しておいでよ」
 これが最近チェリーの口癖になっている。少しでも会いたくなると酔っぱらって部屋に押し掛けてくる。ホテルの親父には女を入れるなと言われている。男とは見られていないようだ。彼女には飲んだ時に結婚前にエリに嵌められた話をしている。彼女は復讐すべきだと言う。それで少しずつ復讐の火が燃え始めている自分に驚いている。
 まずあれからどうなったのか大阪の探偵社から東京の探偵社を紹介を受けた。もう10日になるが初めてのメールが入ってきた。
『・・・証券会社の方ですが、専務は移動なく以前と同様上場チームの担当役員です。会長が取締役から抜けて相談役になっています』
 会長と専務の戦いは専務に軍配が上がったようだ。
『上場チームの部長は任命されず課長に畠山調査部係長が抜擢しています。この辺りは社内でよくない噂があり調査を続けます』
 やはり畠山は専務に買収された。
「専務秘書のエリさんは兵頭さんが退職後ほとんど同時に退職となっています。教えていただいた引越し会社で住まいのマンションは見つけました。調査はこれからです…』
「神部て言う探偵ね」
 背中から覗き込んでいるチェリーの手がズボンのチャックを下している。













 
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  1. 2017/03/25(土) 07:04:00|
  2. ミステリー
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振出4

「確かに雄介だな」
 髭の寿司屋の店長が頷いている。
「三郎か?」
 高校の同窓生だ。
「家を継いだのだな?」」
「ああ。ところでまだ分からないのか?」
「何が?」
「こいつだよ」
とチェリーを指して言う。
「よく顔を見てみろよ」
 ビールを入れたチェリーに向かって店長の三郎が笑って言う。だがそれ以上は口を挟まず寿司を握っている。どうも話ができているようだ。
「ヒロか?」
 記憶が蘇ってきた。博と言ってヒロとそのころ呼んでいた。高校を卒業してもよくネットカフェでたむろしていた。そのネットカフェの店長の連れ子でいつの間にか仲間に交じっていた。
「そうよ。18歳で女になったの」
「あの日はアナルに入れたのか?」
「よかったよ」
「何か微妙だな」
「覚えている?雄介や三郎のグループでは私のフェラは人気だったはずよ」
 そうだそんなこともあった。自分の中でヒロとチェリーを同一視できない。



















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  1. 2017/03/24(金) 06:24:51|
  2. ミステリー
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振出3

 中古のパソコンを買って日払いの狭い部屋に閉じこもる。問題は個人的に開いていたネット口座が使えるかどうかだ。これは学生の時から使ってきたもので会社もエリも知らない。ネット口座も大阪で開いたものを使い続けている。ここではライブなどの仕事にかかわる株には手を出していない。
 ライブの事件をしばらくネットで調べてみることにした。室長の件は自殺で片が付いたようだ。ライブの未公開株の引受先は取引先関係者が半分、残りは不思議に若い女性が多い。だが事件としては収まったようだ。それに反して再びテレビ局の株の買い占めが進みまた上がり始める曲線の足が見えている。それで手持ちの金で300万を買った。
「お客さん!」
 下からおばさんの声がする。亭主は朝から競艇通いだ。1週間もここにいるとここの住人のこともよくわかってくる。どうも私はネット詐欺と言われているようだ。
「警察やなくて若い子よ」
 フロントに降りるとおっさんたちに取り囲まれたチェリーが足を組んで座っている。
「なんで来ないのよ」
「ネットをやっていると時間を忘れるのだ」
「変わらないね」
「え!」
「店に行くよ」
「今日は休んでいる。寿司を奢ってよ」
「よくここが分かったな?」
「このあたりのホテルは私のテリトリーでね」
 今日はスリムなジーパンがよく似合う。











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  1. 2017/03/23(木) 07:48:45|
  2. ミステリー
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振出2

 朝起きるとベットには全裸の若い女の子の背中がある。振り向いたチェリーはいい形の乳を隠すことなく私を見つめている。
「分からない?」
「何が?」 
「いいのよそれじゃ。凄くビンビンだったわよ」
「いくらだ?」
「3千円」
「抱いたお金だよ」
「飲み代だけで今日はいい。でも時々遊びに来ること」
「どうしてだ?」
「昔私の好きだった人を思い出したからよ。いつ戻ったの?」
「東京からだ。株で失敗して一から出直しだ」
と答えて話がかみ合ってないように思った。
「株ね。その人も株が好きでね。一日中パソコンに向き合っていたわ。それで私も教えてもらって少し株もするよ」
「そうか。ならもう少し即戦力を指導しよう。それに次は金を払う」
「私も気持がよかったから払える時でいいよ。どこに住んでいるの?」
「この通りの奥の日払いだ」
 チェリーは全裸のままシャワー室に入る。エリはグラマーな部類だがチェリーは少年のようなスリムな体をしている。手の中に入るという感じの乳房だ。
「株をやっているならライブは買った?」
「私たちには手がでないわ。上がりすぎで怖い気がする」
「そうだな。実力以上の動きをしている」







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  1. 2017/03/22(水) 06:55:24|
  2. ミステリー
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振出1

 この街は懐かしい臭いが充満している。路地を抜けて日払いのホテルに1か月分払って3日間水だけで眠っていた。この街に生まれて大学までここで住んでいた。早くこの街から出たいと奨学金をもらい大学に行った。それでようやく東京の中小証券会社に入社したのだ。その時にこの街を捨てたはずだった。
 夕方初めて外に出る気になった。もう冷たい風が吹く季節になっている。気になって新聞と週刊誌を買う。昔からの店もあるが新しい居酒屋も増えている。その一つに入ると焼きそばにビールを頼む。新聞を広げるとついつい株価の欄に目が行く。ライブは依然高値更新をしている。週刊誌にはライブの室長の自殺の記事が出ている。
 彼は未公開株を自らの彼女に持たせて相当な利益を上げてきたとある。おそらくその女たちはライブの会長の女だろう。どうもこの記事ではこれで決着ついたような書き方だ。記事の片隅に私のことも行方不明と書かれている。
「歌うたわないの?」
 若い女がカウンターの中から声をかけてくる。昔はこの辺りは年増ばかりだった。今は若い子ばかりが並んでいる。
「じゃあ私が歌うからビール奢ってよ」
 どうも歌の料金とビール代が付けられたようだ。胸にチェリーという名札をつけている。私の隣に常連が座ってチェリーに酒を注文している。だが相手しないで私に話しかけてくる。
「大阪で生まれた女歌ってみる」
「古い歌を知ってるのだなあ」
 でもこれは昔は十八番だった。歌いだしたがなかなかうまい。歌が終わると耳元でひそひそ話しかける。私もチェリーも3本を空けている。
「おい。もう戦線離脱かよ」
 チェリーはジャンバーを引っかけてきて酔っている私の腕を抱えて外に飛び出す。















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  1. 2017/03/20(月) 07:08:12|
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地崩れ11

 3度目の任意同行の後、署内が急に慌ただしくなった。この署内で尋問を受けているのはライブの室長と私だ。そう言えばまだ知能犯の刑事が現れない。彼が2人に交互して尋問をしている。1時間半待たされて知能犯の刑事が渋い顔で入ってきた。
「室長が今朝早く飛び降り自殺をした」
「自宅のマンションで?」
「いや取り調べの間この近くのホテルに泊まっていた。会社が用意していたようだ」
「本当に自殺なのですか?」
「分からん。だがこうなると君しか事実を話せるものはいなくなった。だが彼が独断で未公開株の手当てをしていたと言っていた」
 だが私の尋問は何の成果もない状態だ。実際に未公開株の手当てをしていたのはライブの会長と専務だ。室長も事務作業をしていたぐらいだろう。私は一切参加していない。だがここまでやるとは追いつめられているということだ。しばらく身を隠さないと危ない。
 警察から出ると、その足で東京駅のロッカーに向かう。これは尋問の時から用意していた。確かに専務やエリに罠にはめられた。だがそれを覆す証拠がない。同じように殺されてしまっては罪を被せられることになる。必要なものはこの鞄にまとめた。通帳に残っていた金もすべて現金に換えた。とはいうものの贅沢なエリと付き合うためにほとんど預金を使い込んでしまっている。
 もう一度原点に戻って出直そう。
 新幹線に乗り込むとどっと眠気が襲ってくる。初めて上場チームの課長に抜擢された時のことを思う。
「君を推薦したのはライブの会長だ」
「会ったこともないですが?」
「いやインターネット仲間だと言ってたさ」
 だがそれだけですっかり忘れてしまったいた。














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  1. 2017/03/19(日) 06:16:17|
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地崩れ10

 自己都合退職をするべきではなかったのか。だが心はもう会社から離れている。誰からも携帯に連絡がない。毎日新聞や週刊誌を見ているがライブの上場についての記事に専務の名前が出てこない。だがここを出ていこうと考えている。
「兵頭さんいるか?」
 ジャンバー姿の男が2人顔を出す。
「あなたは1か月前に退職届を出されたようですね?」
 彼は知能犯の刑事だという。
「ええ。君に詳しい話を聞きたいのだ」
「どうした取調べですか?」
「ライブの件だ。君も知っていると思うがライブが未公開株を相当ばら撒いていたのだ」
「いえ、そういうことは知りませんが?」
「専務は?」
「昨日呼んだがすべて君が仕切っていたとな」
「私は上場準備の事務作業が中心で未公開株の配分はライブで決めるものです」
「こちらの調査では君もライブの株をもらってたようだな?」
 やはりあの5000万は払い込みの金だったのだ。
「逆に聞きたいのですが、その通帳の払い込んだ金は?」
「すぐに上場の後5倍になって入金された。だがすぐにエリという女性の口座に振り込まれている。変な奴だな。自分がしたことなのに初めて聞くようだな?」
 やはりエリが絡んでいる。
「誰が呼ばれているのですか?」
「証券会社では専務と部長と君だ。ライブでは会長と室長だ。今の状態では君と室長が事実を握っているとみなが言う」













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  1. 2017/03/18(土) 06:50:50|
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地崩れ9

 その夜私はエリのマンションを訪ねた。このマンションには何度か来たことがあるが泊めてもらったことはない。玄関のブザーを鳴らすが応答はない。40分待っていて出る人と入れ替えで中に入る。ここは分譲貸で彼女の所得では高望みの部屋だ。8階までエレベターで上って部屋の前でベルを鳴らす。反応はない。
「そこの人は1週間前に引越しされましたよ」
 何度か顔を見られている管理人が後ろに立っている。気のよさそうな女管理人なのでエリも気安そうに話していた記憶がある。
「会社を休んでいるので心配で見に来たのですが?」
「彼女結婚すると言っておられましたよ」
 初めから私を嵌めるつもりで付き合っていたのではなさそうだ。
「ここは元はどなたが住んでいられたのですか?」
 エリがいつか飲んでいた時にこのマンションが会社の人間から借りているといっていた。その時はふ~うんと聞き流していたが。
「上辻という男性で」
 専務だ。
「私の会社の上司です」
「3年前に新しいマンションを買って引越しされました。彼女はその後半年後に入ってこられたのですよ」
 専務はIT会社時代に同僚と結婚していて子供も2人いる。だが女関係は絶えない。やはり噂通りエリも専務の女だったのか。今回の事件の根元は専務だ。
「どこに引越ししたのか?」
「それは言えませんが、その段ボールの引越し会社に電話されては?」










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  1. 2017/03/17(金) 07:01:11|
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地崩れ8

 いつものように会議室で新聞などを読んでいると、調査部の担当が一人ずつ呼び出していく。午前中に上場チームの6人が呼ばれて帰ってこない。私は一人近くのレストランでランチを済ませ部屋に戻る。夕陽が差し込む時間になって初めて調査部の女性が入ってくる。
「調査部に行くのでは?」
「いえ、社長室に来るようにということです」
 社長室のソファーに座っているのは人事部長と畠山調査部係長だ。
「すでに人事異動の発表を決めた」
 社長派の柱と言われている人事部長だ。上場チームの6人がことごとく他部署に移動だ。上場チームの部長は人事部付けとなっている。
「上場チーム室は?」
「解散だ」
「専務は?」
「それより君の問題だ」
 畠山係長が通帳のコピーを広げる。5000万の入金がありそれがライブ株の購入に振り込まれている。
「ありえない!」
「これは君の通帳だな」
「使っていない通帳だ。どこで手に入れた?」
「エリさんが専務に提出したのだ」
 エリが!?
「役員会では懲戒解雇、刑事告訴の流れだが専務が自己都合退職を提案している」
「会社としてはこの事実はなかったものとして穏便に処理したい。もちろんこの通帳も存在しない」
「君は1か月前に辞表を提出した」
 畠山は氏名だけが空いた辞表を広げた。



















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  1. 2017/03/15(水) 06:14:21|
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地崩れ7

 ライブの上場は話題を醸しながらも目標を超えて株価を上げた。だが上場チームは同時に部屋に軟禁状態になった。7名が会議室に出勤して帰るという異常事態だ。当の専務は毎日畠山調査係長と連日部屋にこもったり車で出かけているようだ。エリは携帯が全くかからない。
「今日は役員会議があったようだ」
 そういう情報が少しずつ入ってくる。
 定時が来ていつものように裏口から外に出る。今回の措置はマスコミには全く伏せられている。ぼそぼそ歩いて屋台に座る。ここ毎日のコースだ。
「まあ1杯飲めよ」
 ゆっくり首を向けると会長が酒を注ぐ。
「役員会だったらしいですね?」
「ああ」
 キレが悪い。
「何が決まったのですか?」
「仕組まれたよ」
「上場の取り消し?」
「話をそらされたな。しばらく休んでこの携帯に連絡して来いよ」
「内容は?」
「言えない」
 もう1杯頼むと会長は立ち上がった。私は握らせれたメモ用紙を無造作にポケットに押し込んでコップを飲み干す。専務が逃げ切ったような話だが私にとってどうなるのか。











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  1. 2017/03/14(火) 06:54:01|
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地崩れ6

「専務あのパソコン開かないのですが?」
「もう作業は終わった。開く必要もない」
 専務室から不機嫌そうに専務が役員会議に出ていく。私はパソコンを再度調べてみたが、今までの記録はすべて消されたように思った。上場はもう明日に来ている。ここまで来てもう引き延ばすことはできない。
 役員会を終えてもう一度専務室を覗くと、鍵が掛かっていて秘書のエリもいない。調査部を覗いて同僚の顔を見つけようとしているが、
「畠山係長は専務と出ているぞ」
 調査部の課長が笑いながら廊下に誘う。
「役員会では専務と社長にライブの上場については押し切られたようだ」
「畠山は?」
「専務の了解をとって個別の上場後の上場チームの検査をすることになった」
「よく専務が認めたな?」
「会長が押し切ったのだ」
 それを予想してパソコンの情報を消したのだ。だが気になるのは専務が今度に限って課長の私に何も相談をしていないことだ。エリも毎週泊まりに来ていたのが全くない。
「畠山は前々から部長の内々の指示で3か月前から上場チームを調べていた。それで彼に任されたのだろう」
「一人で?」
「何も知らされていない」
「部長が指揮を?」
「らしいな」
 不満なようだ。















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  1. 2017/03/13(月) 06:49:37|
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地崩れ5

 今日もエリは専務の接待に付き添っている。仕方なくいつもの屋台に寄ろうと階段を下りていく。課長になる前まではよくこの屋台に同期と飲んだ。
「儂も誘えよ」
 会長が肩をポンと叩いて屋台の長椅子に座る。親父が熱燗をコップに入れる。
「昔はよくここで役員とも飲んだよ」
 会長は3年前に代表取締役社長を下りて無役の会長職に就いた。会長は40歳になって社長を継いだ。元々銀行に入っていて支店長を勤めていたようだ。長男が証券会社の常務だったのが自己売買で大穴を空けたので次男の彼が急きょ引き継ぐことになったのだ。これは上場の歴史で何度も見ているが、こうして酒を飲むのは初めてだ。
「どうだ面白いか?」
「はい」
「私の撒いた種だが、息子ではあの男は使い切れないのだな」
「専務のことですね?問題でも?」
「あまりにもライブに足を入れすぎだな。渡辺会長はまだ42歳だが、無謀にも株をマネーゲームだと思っている。これは求められるITじゃないな」
「だがITバブルは起こっています」
「そうだ。どこまで進んでいる」
「月末には上場をします」
「2月も早いな。どうしてだ?」
「渡辺会長が急いでいるようです」
「テレビ局の株の買収だ。さすがにライブグループの資金が不足してきた。これは対テレビ局ではなく既存企業との対決だ。ネット証券はこの争いに巻き込まれてはいかん。よく考えるのだ」










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  1. 2017/03/12(日) 07:03:09|
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地崩れ4

 会長が動き出したのは現場にいる私にはわかる。調査部だけではなく総務部なども部内の書類を持ち出していく。専務からの言いつけで初めから上場の重要書類は鞄で持ち歩いている。だがライブの上場準備は着実に進む。
 エリからいつものように専務からの呼び出しがある。昨夜は珍しくエリが私のマンションに現れて泊まっていった。飲みさしのワインを持ってきていて美味しかったと勧められた。 
「今日から手持ちのファイルはここの共有のパソコンのみに入れるのだ」
 専務が指をさしたパソコンはネットに繋がっていない金庫のようなものだ。
「調査部が煩くなった」
「ライブはどうするのですか?」
「もうすぐだ。何としても上場させる。今から作業してくれ」
 嫌に焦ってるな。さっそく作業を始めると専務は社長に呼ばれて部屋を出ていく。私はまず同様の情報がないか確かめる。作業中なら記録を上書きしてしまうからだ。慎重を期して専務のパソコンの情報を一度コピーする。
「今から出かける。ついてこい」
 慌てて作業を済ませると専務専用車に乗る。
 ライブの会長室だ。ここは重要な会議があるとここに必ず集められる。専務は詳細なことはタッチしない。いや証券自身が苦手なのだ。
「期間を縮めるのは得策ではないと思いますが?」
 馴染みなった公認会計士が繰り返すが渡辺会長は首を横に振る。専務は会長に賛成している。どうも週刊誌がライブの今迄の上場や株の売買に疑問を投げかけているのだ。テレビ局の買収の資金が底ついてきたのだ。私も心配になってライブグループの売り上げを分析し始めている。渡辺会長と専務はマネーゲームをしているのだ。










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  1. 2017/03/11(土) 06:51:22|
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地崩れ3

「兵頭君」
 唐沢調査部長だ。日頃から上場チームと仲が悪い。唐沢部長としては専務になれなかった恨みが今でもあるようだ。
「たまにはコーヒーでもどうだ?」
 半ば強引に応接室に引き込む。
「心配するな。贔屓の専務は秘書を連れてゴルフに行っている」
 エリは今朝は携帯に出なかった。部長は自分でコーヒーを入れて私の前に置く。
「ライブの件ですね?」
「そうだ。証券業界でもライブは話題だ」
と丸めていた週刊誌をテーブルに置く。最近のライブはIT事業より株の売買で社会を賑わせている。大手のテレビ会社の株を買い占めている。これは専務の話でも出ている。
「昨日会長が来てな、私が呼ばれてたよ」
「社長は大賛成と聞いていますが?」
 社長は5代目になるが父親の会長が中興の祖として今の証券会社がある。実はネットの導入は会長の仕事だった。今の専務を引いたのも会長だが専務は煙たいのか社長にくっ付いている。
「彼は分かってないのだ」
「その話なら私じゃなくうちの部長にしてくださいよ」
「あんな腰ぎんちゃくは相手にならん。実際に上場を現場で手掛けているのは君だ」
 確かに部長にはマル秘の情報は上がっていない。
「専務と手を切るのは今だ」
「私は単なる部下ですよ」
 立ち上がると頭を下げて出ていく。確かに社内では専務の下は花形で執権は課長が握っている。だが肝心の部分は専務が握っている。ライブの会長は重要な打ち合わせには専務しか呼ばない。








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  1. 2017/03/10(金) 06:54:24|
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地崩れ2

 エリとは来春に結婚の予定だ。いい女だが好きなタイプではない。派手好みで私には合わない。だが専務の付き合いで何次会も付き合っている間にそういう仲になってしまった。子供ができた。26歳の彼女もいい頃合いと思っているようだ。
「ライブの会長が来てるのでもう行くわ」
 まだ1時間もたたない間にエリが立ち上がる。
「専務は僕が一緒だと知っているはずだが?」
「ライブの会長が優先よ」
 もう席を立っている。私は支払いを済ませると赤坂の屋台に掛けてコップ酒を頼む。
「なんだデートじゃなかったのか?」
 先ほどの調査部の係長だ。彼とは時々ここで飲んでいる。もうコップが空になっている。
「ライブの話の続きだがな。調査部はライブの上場には反対だよ。グループ間の売買が多すぎる。粉飾の疑いがある。儲けは実質グループの上場益だ。まるでゲームのようだよ」
 ITバブルの始まり時期だった。ライブの会長らが火付け役だった。今日エリカの行ったクラブもそうしたバブル社長の集まりの場だ。お互いに2杯目を頼む。
「いやな話だがな。エリちゃんは元専務の彼女だと噂だぜ」
「そういうことは言わせていればいい」
 彼が立ち上がって3杯目を飲む。確かにエリを抱いた。それが唯一自分を縛っている現実だ。それ以上でも以下でもない。ポケットから千円札を2枚出して立ち上がる。ここから路地に入ると赤坂の繁華街に出る。この近くに専務がよく行くクラブがある。10時を回っている。
 目の前をゆっくりとタクシーが動き出す。後部席に専務にもたれて眠っているエリがいる。














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  1. 2017/03/09(木) 06:47:46|
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地崩れ1

「専務がお呼びよ」 
「今夜はいつもの店で8時だ」
 エリは専務の秘書だ。私は上場開設チームに2年前に30歳の抜擢人事で課長で来た。専務が部長の上にいて直轄している。
 ノックをすると、髭を撫でながらファイルを机に乗せる。
「今度は大物だ」
 専務は5年前にIT企業から肝いりでこのネット証券に来ている。エリはその時から専務付だ。
「またこのグループですか?」
 またと言ったのはここ5年間でこのグループで4社目だ。
「ここが柱の会社だ。これで一休みだ」
 このグループの上場は証券界では評判が悪い。専務はファイルを渡すともう社用車の手配をしている。グループのドンの渡辺会長と飲みまわっている。私もさすがに不安なって調査部の同期の係長に内密にこのグループの調査をかけている。
 その足で調査部の同期を携帯で呼び出して隣のビルの喫茶店に入る。
「ライブの上場だろう?」
「早いな?」
「うちの部長から正式の調査が来たよ。どうも社長の内諾をとってるみたいだな」
 調査部の取締役部長は専務が来るまでは有力な専務候補だった。生え抜きの56歳の彼にとっては最後のチャンスだったのだろう。
「これは頼まれていた調査だが専務は昔ライブの会長の秘書室長をしていたぜ。こちらに来る2年前に辞職している。株で大穴をあけたらしいが詳しいことは分からん」
「調査部には?」
「まだ内密だ。俺は専務に憎まれたくないからな。その代り次の人事にはそちらの派閥に入れてくれ」












 

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  1. 2017/03/08(水) 07:02:20|
  2. ミステリー
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迷い道13

「あなたは10歳ころからエリを性の奴隷にした」
「いや、愛していたのだ」
「それは愛ではありません。私は西崎に強姦させたあなたの話だけを信じていましたが、実は15歳から100人を超える男に抱かせていた。あなたは美人局で金を稼いでいたのです。エリは鍵をかけた日記に書き残しています」
「エリにも金をやった」
「その頃あなたは今の組の傘下の愚連隊にいた。兄貴分にもずいぶん抱かせていた」
 時々ドアが開いて岬の顔が覗く。やはり来ていたのだ。
「その頃にはエリにしゃぶも飲ませ始めた。あなたの趣味でね。あのスタジオにエリの若い頃の裏ビデオがあった。あれは調べてみたが完全にしゃぶを飲ませて撮っていた。あれはマニュアでは幻の映像と言われている」
「・・・」
「エリが殺した話もしていたですね?あれはあなたが追い回されていた彼女でした。秘書の毒殺はライブの会長からあなたに依頼があって、エリに実行犯を依頼した。畠山はライブの会長を脅した。でエリに殺させた。あなたは常に莫大な金を手に入れて、裏に隠れていた。エリはそのことを知っていたが、あなたを愛していて許していたのですよ」
 吉井組長の顔が冷たいもう一つの顔になった。
「あなたはエリを遠ざけようとして私と結婚させようとしたと言っていましたが、反対していたのが実はあなただったのです。なぜか。それはエリが言うことを聞かなくなったからだ。ライブの会長は私の死を望んだ。それであなたがエリに指示した。いつのものようにね。だがエリは私を殺さなかった」
「それが今の結果になっている」
 ドアのノックの音がする。時間なのだ。
「あなたは鬼畜より劣る」
 私はもう背中を向けていて、ドアを開けて検察官と書記官と入れ替わる。
「凄い男ね?」
「録音を取ったな?」
「今度会ったら抱いてよ」
 岬が手を振っている。


    《完》

       


どうしても私は復讐が大きなテーマになるようです。
ここからはなかなか抜け出せそうにもないようです。
珍しく復讐から抜け出した『橙の電車』を書きはじめました。
これは子供の頃に体験したことから物語が始まります。
是非お読みいただけるのを楽しみにしています。


             夢人














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  1. 2017/03/07(火) 06:55:25|
  2. ミステリー
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迷い道12

『やくざ2人と吉井組長を逮捕したよ。あの通帳を銀行で調べた。何と7年で100億も吉井組からライブに流れていたわ』
『なんの金だ?』
『オレオレ詐欺で組が回収した金の報酬金だよ。システム開発と運営をライブが担当してた。実際の回収は吉井組がしていたの。これで起訴できるわ』
『吉井組長に会わせてもらえませんか?』
 しばらく時間が空いて岬から検察に来るように言ってきた。出がけヒロに面倒を見てもらっているエリに声をかけた。相変わらずエリは他人の顔をしている。だがエリは朝全裸になってヒロを求めてきたようだ。ヒロの体の記憶はあるのかもしれない。
 検察に入ると円形テーブルのあの男が顔を出して黙って警察官の立つ部屋を指す。中に入ると検察官の机に向かって手錠を嵌められた吉井が座っている。先ほどまで尋問があったようだ。
「君が来たか?」
「聞きたいことがあります」
「君があの証拠を出したのだな?」
「エリと吉井組長は守る気でした。それが途中で気が変わったのです。あなたが私に説明していた話は作りものでしたね?エリのパソコンに侵入しました」
「あの通帳のコピーもそこに入っていたのだな?」
「だけでなくライブの会長とあなたのメールが山のように。私の調査と比べると、いろいろな事実が浮かんできました。なぜ妹のエリをそこまで利用したのです?」
 吉井組長は天井を見つめている。









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  1. 2017/03/06(月) 07:14:14|
  2. ミステリー
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迷い道11

 ヒロがエリのハンドバックの中からお守り袋を見つけ出して私に見せた。エリの記憶はまだ戻らない。袋の中にはパズルのような数字が並んでいる。これを見せると部屋に持っていきパソコンに向かっている。私はヒロとエリを置いて会社に向かう。
 昼にアゲからメールが入った。
『あのパズルの数字暗号になっている。あのエリのファイルが開いたよ。添付したよ』
 私は弁当の箸を置いてファイルを開く。今の時間はアゲは神部の事務所にいる。ヒロはエリとまだ食事中だろう。これは通帳を1枚1枚撮影している。毎月1億の金が振り込まれている。
『岬この通帳を調べられるか?』
 ファイルを添付して送った。
『すぐにマンションに来てください』
 神部からだ。私は飛び去すとタクシーを捕まえた。神部何を急いでいる。車を降りたら警官が玄関に立っている。私は走り抜けて部屋に入る。入り口にも警官が立っていて、岬が神部と話している。
「あの2人を付けてきたらこの部屋に入ってピストルをぶちかましたのですよ」
「ヒロどうした?」
 ヒロが蹲っている。その横に蒼白したエリがヒロに抱き付いている。
「怪我はないけど飛びかかって柱に打ち付けたのよ」
と岬が説明する。弾が電灯を壊している。
「岬、吉井組長を引っ張れ。証拠は出す。だがエリは巻き込まないでくれ」
 吉井組長はあの通帳の記録を恐れて妹を手にかけようとした。私はヒロとエリを抱いた。






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  1. 2017/03/05(日) 07:08:02|
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迷い道10

 ヒロがエリを迎えに行っている。私はヒロに頼まれてしばらく保護人の届けを出してマンションに受け入れることにした。それで朝からヒロの荷物を隣の部屋に移す。そこにエリの蒲団を敷く。
「ヒロとエリが一緒に寝るの?」
「抱き合うわけではないよ。記憶が戻ってまた自殺するのを防ぐためだ。エリが寝てまたこちらで3人でやればいい」
 アゲはエリにはまだ私たちと同じように接することができない。それにエリのパソコンを解析するごとに恐ろしさを感じている。エリはただ怖いだけの女だったのか?エリのパソコンを見ていると兄が10歳ころからエリをセックスの獣に仕立ててしまったようだ。兄と妹ではなく夫婦のような生活をしている。
 神部から久しぶりにメールだ。西崎とエリに心中事件からほとんどの仕事はアゲの仕事になっている。
『例の2人組のやくざが横浜に戻ってきています。それも西崎の後のオレオレ詐欺をやっていますよ。調べてみたのですが、吉井組長がクラブで彼らに酒を飲ませています。これは聞いた話ですが、もともと彼らは組長の直属の部下だったようです』
 と言うことは畠山毒殺にエリにつけたのは西崎ではなく吉井だ。ヒロを西崎に奪われたのも吉井の指示かもしれない。
『その2人を張ってください』
 夕方にエリがヒロに付き添われマンションにやってきた。エリは私とアゲを見てヒロの背中に隠れた。アゲは私の背中に隠れる。
「日常の動作は出来るのか?」
「それは問題ないよ」
「しばらく2人は向こうの部屋だ」
「警察はどうなるの?」
「今の状態なら吉井組長と同じ不起訴だろうな」
 ヒロはエリがいつも持っている黒革のハンドバックを肩にかけている。











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  1. 2017/03/04(土) 06:50:09|
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迷い道9

 吉井組長は予想通り不起訴で帰された。ライブの会長は正式に殺人示唆で起訴されれた。エリの記憶は戻らない。警察もエリの実行犯を諦めたようだ。ヒロは毎日エリを訪ねては店に出かけている。私は久しぶりにライブに出かけて女社長に会っている。
「思ったより低い値ですが上場は可能です」
「仕方ないですね。あの人の裁判が始まっていますからね」
 彼女にとっては会長はもう遠い人になっている。書類をかわすと私だけが応接室に残される。この事件はライブの会長だけを生贄にして終わるのか。
『エリのパソコンに入れたよ』
 アゲからのメールだ。
『すべて見れるのか?』
『まだ開かないファイルはあるけど、開いたファイルから送る』
 私は送られてきたファイルを開いていく。これは何だ?
『エリのメールは別にあると聞いていたが?』
『それは吉井組長とライブの会長だけを受けている。もちろんエリは別のアドレスを使っているよ』
 そこには中に別にファイルがある。
『それはまだ開かない。どうも重要なのがここに入れられているのだと思う。でも残っている文章からは秘書の毒殺についてはこの二人が前もって知っていたことになるよ』
 アゲの言うようにここで3人が相談していたようだ。エリが2人を操っていたように見えるが、吉井組長とライブの会長はエリを逆に操っている。エリは兄に気に入れられようとして毒殺も手伝っている。




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  1. 2017/03/03(金) 06:57:39|
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迷い道8

「記憶を失ったのですか?」
「一時的なのかどうかわかりませんね」
 医者がそれだけ伝えると部屋を出ていく。エリは子供のような目で窓の外を見ている。すべて忘れてしまったのか。吉井組長は一度も現れていない。二人の関係はどうだったのか。
「ヒロも来たのか?」
「ええ」
 ヒロがコートを脱ぐとその下はショーのドレスだ。
「綺麗!」
 エリが振り返って手を叩いている。
「チェリーを覚えている?」
「知らない」
「君の店を継いでいる」
「妹?」
「妹のチェリーです」
 ヒロはエリを抱きしめている。エリはドレスを掴んでいる。エリはヒロが男であることも忘れている。ドアから岬が顔を出す。
「警察に連れて行くのか?」
「記憶が戻るまでは呼んでも仕方がないと。このままでは西崎とエリは心中扱いになるわ。どちらのグラスの毒も同量のもので致死量だった。一人は死んで一人は生き残った」
「吉井組長は?」
「黙秘しているよ」




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  1. 2017/03/02(木) 07:17:37|
  2. ミステリー
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迷い道7

 ライブの会長が自己破産をしたと新聞に出た。私は女記者のスマホを鳴らした。
『自己破産の詳しい内容が分かるか?』
『今日の新聞見たのね?こちらも追っていたから特集載せるわ。債務者の外資系の投資会社が強制的に自己破産要求をしたようよ。300億ほどあるけど、今のテレビ局などの株を手放したら負債は50億ほどになるそうよ』
『さすがに調べているな?』
『それとね、今日にでも吉井組長が任意で呼ばれるわ。詳しいことは分からないけど』
 すぐに岬に入れる。
『吉井組長のことね。これはオフレコよ。会長はエリだけでなく吉井組長を共犯者と言っているのよ。でもこれも証拠がないから不起訴になりそうよ』
「妹さんが戻ってきて血色がよくなったわよ」
 机の上に水野の古巣からの副幹事の要請文章だ。
「稟議を書いてくれ」
 スマホが鳴る。
『エリさんの保護者ですね?目を覚まされました来てください』
「病院に行く」
「直帰ですか?」
「ああ」
 もうコートを手に外に飛び出している。すでに病室には岬が来ている。
「どうだ?」
「話してみたら?」
 エリがベットに凭れている。表情がない。
「目が覚めたらしいな?」
「この人誰?」






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  1. 2017/03/01(水) 06:21:30|
  2. ミステリー
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yumebito86866

Author:yumebito86866
夢人です。これは『空白』に繋がる作品ですが、これは段ボール箱の住人ではありません。今回書下ろしで書き始めました。ここに登場する人物はみなどこかで触れあった人物ばかりです。そして知った事実がこの小説を書かせました。

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