迷い道

結婚相手から罠をかけられた。奈落に落ちてヒロにあった。ヒロは見違えるようないい女になっていた。再び舞台に戻り捨てられた謎に迫る。


邂逅4

 店はもう閉まったようだ。ノックがあって岬が心配して覗いた。
「今日は彼を借りる我慢してくれ」
 組長が手を振っている。岬は何か異常なものを感じているはずだ。わざわざ覗きに来る危険を冒している。
「君はモテるようだな?エリが目的のために殺さなかったことはなかった。秘書も畠山も殺した。だが君の場合は自己都合退社で終わらせた。あの時専務が懲戒解雇を求めたのを反対したのもエリだよ」
 専務は内緒にしている。
「エリは子供を失ってこれから?」
「それが私にはわからない。だが子供が危ないと言うのは医師から聞いていた。本人も分かってたはずだ。今はへこんでいるがこの反動が怖い」
「でも新しいライブの会長はNやSを切り離したはずですが?」
「それを今西崎が持っている。その西崎を押さえ込んでいるのはエリだ。吉井組もエリに握られているのさ」
「裏の社会に君臨する?」
「ああ」
「君はライブの会長もエリも押える証拠を握っている」
「私は警察の犬じゃありません。私の使命の仕事はほぼ終わりました」
「そうですかね?」
 私の動揺を組長は見ている。そうだ。私は知らなかったエリを見せられて次の足が踏み出せられなくなっていた。
「組も影響受けますよ?」
「できるだけの防御はする。気にするな。送らせようか?」
「いえ」
 私は真っ暗な通路を出て裏口から外に出る。
「生きてたね?」
 岬が横から腕をとる。
「凍えるかと思ったよ」
 

 







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  1. 2017/07/19(水) 06:20:47|
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邂逅3

「西崎さんが会いたいと?」 
 ボーイが覗いた。
「今日は忙しいと言ってくれ」
 組長はそう言って話を続ける。余程胸に詰まったものがあるようだ。
「組の資金が底ついていた。それでついエリの話に乗ってしまった」
「ライブの?」
「西崎がまとめていた振り込め詐欺のグループと組むことになった。エリは次々とNやらSの会社を作って組とパイプを繋いだ。これがもとで組は経済知能犯と呼ばれるようになった。それで私は若頭となった。そのためにエリを抱かざる得なくなった。エリは毎回会う日と場所を指定してきた」
「やはりアルファベットの会社は吉井組と繋がっていたのですね?」
「ああ、もう抜き足のできないところまできた。組長の奥さんが亡くなって一人娘との結婚の話が出た」
「今の奥さんですね?」
「この時も大変だった。エリはまたもやその娘を狙った。これには西崎も加担していた。薬を飲ませて自殺させようとしたが、さすがに西崎が真相を伝えてきた。それで私がエリと和解をした。定期的に会うことを条件に結婚を認めさせた」
「そんなときにエリは妊娠した?」
「そうだ。いつもそれだけは注意していたのだが」
「エリは誰の子だと思っていたのですか?」
「君と私の五分五分だと思っていたようだ。それはその頃本気で君と暮らすことを考えていたようだ。私は大賛成だった」
「なぜエリは私を騙したのですか?」
「やも得ない選択だった」
「選択?」
「ライブの会長からの依頼だった。もし聞き入れないなら吉井組とのパイプもと言われていた。私の組も私が組長となって手を広げたので資金不足だった」
「その依頼とは?」
「君の自殺だった」
「自殺!?」
「だがエリは君を殺さなかった」











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  1. 2017/07/18(火) 06:46:58|
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邂逅2

 吉井組長からの呼び出しだ。9時に横浜のクラブに行く。教えられていたのか岬が入口の待っている。
「気を付けてね」
 小声で耳元で囁く。初めて通る従業員専用の細い通路を通る。その一番奥にドアがある。ドアを開けるとボックス席に吉井組長が一人ウイスキーを飲んでいる。
「悪いな呼び出して」
 ボーイが入ってきて私のボトルを置く。
「君が一番エリに近い。だから話を聞いてほしいのだ」
「いえ、私は騙された一人ですよ」
「それは違う。恐らくエリは君と結婚する気でいた」
「私は実感がないです」
「だろうな。エリと私は君が調べたように実の兄妹だ。母は私たち兄妹を連れて横浜に出てきた。この店の前身は料亭で先代の吉井組の奥さんが経営していた。母はそこの女中として3年働いていて組長の女になっていた。私とエリは12歳も離れた兄妹でその頃私は手の付けられない不良で組長の運転手として組に拾われていた。西崎と知り合ったのもその頃だ。エリがまだ12歳の時に私が妹を強姦した」
 組長は自分で水割りを作る。
「エリの道はここから狂ってしまった。この日からエリは自分から求めてくるようになった。それでエリは15歳の時に私の恋人を暴走族仲間を使って撥ねて殺した。その時から私は恐ろしくなってエリから離れるようになった」
 やはり以前にも殺人をしていたのだ。
「だが狂ったように纏わりついてくる。それで西崎を使って強姦した」
 それが西崎の中にあるエリの全裸の写真だろう。
「それが逆効果だった。エリはその後戸籍から抜けて結婚を迫った」
 神部の調査通りだ。
「その頃から西崎を顎で使うようになりライブの会長と知り合うようになった。ライブの会長はエリに興味を持って何度か抱いたようだ。だがエリは会長を利用しようとした。それを私の餌にしようとした。私の組は武闘派だったが逮捕に続く逮捕で組は弱っていた」








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  1. 2017/07/17(月) 06:12:55|
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邂逅1

 ヒロとアゲに送られてマンションを出る。冬の太陽でも黄色く感じる。ヒロが慣れない手でワイシャツのアイロンをかけて、アゲが買ってきたネクタイを締めてくれる。今日から古巣に戻る。ビルに入るとエレベターに乗るが顔見知りはいない。最上階が社長室だ。一緒にエレベターにいる制服の秘書が不審そうに見る。
 受付を抜けてそのまま社長室のドアを開く。
「どこの会社の方ですか?」
 背中に厳しい声が聞こえる。
「いや来たか!」
と社長が握手を求めてくる。
「彼は上場チームの新しい室長の兵頭君だよ」
 私はすっかり名前すら忘れられている。
「遅いよ!」
 水野がもう座ってコヒーを飲んでいる。彼女は係長だ。
「畠山は?」
「タイで殺されたようです」
「やはりエリか?」
「ええ」
「ライブの元会長はどうなる?」
「逮捕は時間の問題でしょう。そういう意味ではライブグループをどう扱っていくが当社の問題になると思いますよ」
 ライブを含めてグループの主幹事はここだ。
「上場チームは全員で8名、二人がリーダーになる。今までの専務の時の課長と古株4名は部署を変えた。ただ今までの調査は部下を入れずに二人でやってくれ」
 社長室から階段を1階降りて懐かしい上場チームの部屋だ。
「さっきからフマホが光っているわよ」









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  1. 2017/07/16(日) 06:48:18|
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踏み込む10

『ママの赤ちゃんが死んだ!』
 エリの子供が死んだとヒロのメールを受けて日本に戻った足で小さな葬式に出た。エリは父親の存在を明らかにしないうちに子供は息を引き取った。チェリーが受付をしていて私の顔を見つけたようだ。私は会場に入って焼香の順番を並ぶ。奥の席には吉井組長がいて西崎と何やら話し込んでいる。その横にライブの元会長が座っている。ネット証券の新社長が私の焼香を待って寄ってくる。
 エリは喪服姿で俯いているが、私の顔を見つけたようだ。
「タイに行っていたようだな?ずいぶん前から子供の体調は良くなかったようだ」
 エリはタイに行っていたことは伏せているようだ。社長もエリの相手を知らないでいる。おそらく実兄妹の血の濃ゆさがよくなかったのだろう。エリの目は凍ったように吉井組長を見ている。エリの傍に行って肩を抱えているのは西崎だ。
 すると吉井組長が私の前にいつの間にか立っている。
「君は冷たい男だと思っているだろうな?」
 小声で話しかけてきて部屋の外に連れ出す。周りに組員が包囲網を作る。その向こうに刑事の岬の顔も見える。
「君は私がこの子の父親だと知ってる。だが私は組を守るためにも父親だと名乗ることはできない。だが誰かに言い訳を聞いてもらいたい」
「西崎さんでは?」
「彼はエリの味方だ。もしエリに命じられたら儂も殺すだろうな」
「まさか?」
 ヒロのメールが入る。そっとスマホを見る。
『助けに行こうか?』
「一度時間を作ってくれないか?きっと君はエリのことは一番よく知っているからな。だが儂の心に重く残っているものを聞いてくれ』
「今回のタイのことも?」
「ああ」




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  1. 2017/07/15(土) 06:51:23|
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プロフィール

yumebito86866

Author:yumebito86866
夢人です。これは『空白』に繋がる作品ですが、これは段ボール箱の住人ではありません。今回書下ろしで書き始めました。ここに登場する人物はみなどこかで触れあった人物ばかりです。そして知った事実がこの小説を書かせました。

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